【うみまち仕掛け人vol.21】水上警察隊の皆さん

2019年10月から始まった、ぽかぽかインタビューの「うみまち仕掛け人」シリーズ。

蘇我・千葉みなとの今にクローズアップして、うみまちを盛り上げる活動に取り組んでいる

”仕掛け人”を取材しています。


●今回の仕掛け人は千葉県警察本部 水上警察隊のみなさん

第21回でご紹介するのは、千葉県警察本部 水上警察隊のみなさんです。

千葉県警察本部 地域部 地域課 水上警察隊

統括船長  福永将晃さん

統括機関長 大沼和彦さん

隊長補佐  高久益弘さん

(左から高久さん、福永さん、大沼さん)

水上警察隊のみなさんは、うみまち仕掛け人vol.18でお話を伺った、千葉中央郵便局局長の伊藤さんからご紹介いただきました。

伊藤さんのインタビューはこちらからご覧ください。

水上警察隊のみなさんは、千葉港・木更津港を中心に、県民の安全を守るために日々警戒・パトロール活動を行っています。

今回の取材場所は、なんと水上警察隊の皆さんが実際にお仕事で使用している警備艇「ぼうそう」!!

ぼうそうは日本全国の警察が持つ警備艇の中でも一番大型の船だそうです。そんな船の中で水上警察隊の皆さんのお話を聞けるなんて、こんなに素晴らしい機会はなかなかありません。

ライフジャケットを着用させていただき、いざ、船内へ。

(実際に水上警察隊の皆さんが使用されているライフジャケット)

警察関係者のお話を伺うことができる貴重な機会に、筆者も緊張感をもって取材に臨みました。

(左から高久さん、大沼さん、福永さん)筆者はライフジャケット着用


●福永さん、大沼さんと千葉みなとの出会い

-福永さんと大沼さんと「千葉みなと」との出会いや、印象についてお聞かせください。

大沼さん:平成9年の10月に採用されてから、千葉のほうで仕事をしているので、その頃からですかね。印象については、私は日本海側で学生生活を送ったので、それと比べて、やっぱり海がちょっと、汚いのかなというイメージはありました。けれども、今は大分、水質なんかも良くはなっているのかなと感じます。

福永さん:私も大沼さんと同じで、平成9年の10月に千葉県警察に就職しました。

-それでは、福永さんと大沼さんとは同期ということでしょうか。

福永さん:ええ、そうなんです。水上警察隊自体が、平成9年にできたので、その年に採用されたという形です。水上警察隊は当年の4月1日から活動しているんですけれども、10月に、船舶職員を増やそうということになりまして。その際に、少し遅れて採用されました。

-なるほど。すごいですね!

ちなみに、その時の千葉みなとの印象はどのようなものでしたか?

福永さん:その時の千葉みなとは、あんまり…。今は結構、ホテルだったり、施設だったりがいっぱいありますけれども、当時は全然何もなくて…。千葉みなと駅に降りたら、海側のほうには、ほとんど施設がないような状態でしたね。それがどんどん、変わってきて、きれいになってきましたね。活気ももう、昔と比べると全然出てきましたね。

千葉みなとの姿は、長い時間をかけて変わってきたのですね。

福永さんと大沼さんは26年間も水上警察隊として日々任務にあたっていらっしゃるそうです!そのお仕事とはどのようなものなのでしょうか?お話を伺ってみましょう。


●水上警察隊でのお仕事について

-水上警察隊のお仕事や、任務に対する想いについてお話をお聞かせください。

大沼さん:県民の皆様の期待に応えられるように、日々「自分に今何ができるのか」を考えて仕事をしています。なかなか、設備の面などで対応できないこともあるのですが、出来ることは必ずしてあげたいなという思いで、日々の任務に取り組んでいますね。

-なるほど。具体的なお仕事内容について、教えてください。

大沼さん:私は機関長として、いつでも船が100%の力を出せるように、日々整備に力を入れています。単純に「動けばいいや」と妥協するのではなく、その時々に最高レベルの力を出せるようにしています。

高久さん:ちなみに、この船(ぼうそう)は最高で時速40ノット(74キロメートル)以上の速さが出せるんですよ。

-時速74キロ以上‼すごい速度ですね。

高久さん:そうなんです。ただ、この速度を出すためには、エンジンなどの整備が行き届いている必要があります。大沼機関長は、船が常にマックスの力を出せるように、機材の整備を統括して行っています。単純に船を動かすというだけではなく、隊員が全力で任務に当たれるようにしてくれています。

大沼さんは統括機関長という、エンジンなどを含む船全体の整備を行う役職についていらっしゃるそうです。取材後、実際に「ぼうそう」のエンジンを見せていただきましたが、圧巻でした。

(↑“ぼうそう”のエンジン)

福永さんの方はどのような役職についていらっしゃるのでしょうか。早速聞いてみましょう。

-本当にすごいですね!福永さんはどのようなお仕事をされているのですか?

福永さん:私は統括船長を務めています。ですので、船の統制はもちろんのこと、事案が発生した際、その事案の発生場所の把握などを即座に行っています。また、地名を言われた際に、「この場所は海が浅いから船では近づけない」「この場所は遠く時間がかかるから、早い船で行かなければならない」などの判断をしていますね。

-通報があった際に、そこまで考える必要があるんですね。

福永さん:はい。地理も正確に把握している必要がありますし、そこで、「一番ベストな船はどれか」を選択しなければならないので、常に考えて、船を動かすようにしています。当然、地理・地形だけでなく、気象情報なども考えながら、船は操縦していますね。行方不明者の捜索に当たるにしても、風が北向きに吹いているか、南抜きに吹いているかによって、(行方不明者が)流される向きも変わってきてしまうので、そういったことも念頭に置きながら、任務にあたるようにしています。

高久さん:最近の捜査でも、事案発生場所である川を「まき」「はつたか」という小型船で登ろうとしたのですが、波風が強くて、とても出せる状況ではなかったんです。ですから、ゴムボートが積んであるマイクロバスで、陸路で現場に駆け付けました。

-陸路で、ですか?

高久さん:ええ、そうです。状況に応じて、そういった判断を下すのが統括船長の役目になります。

-なかなか、判断力が問われるお仕事なのですね。

福永さん:そうですね。水深の浅い場所だとどうしても、大きい船では入っていけませんし、小型の船でも難しいことがあります。ただ、そういった状況下でも、漁船が通る道などがあるので、自分たちで調べて、実際に行けるのかどうか確認したり、ここは水深何メートルで、ここまでなら行ける、といったことも把握していく必要があります。こういったことを頭に入れてないと、救助に遅れが生じてしまうので情報の漏れがないようにしています。

水上警察隊の皆さんは、常に緊張感をもって、県民である私たちの命を守ってくださっているようです。筆者は今年21歳になりますが、地上だけでなく海上でも、警察の方々に見守っていただいて大人になれたのだなあ、としみじみ感じました。水上警察隊の皆さん、いつも本当にありがとうございます。

ところで、今回の取材場所である船「ぼうそう」は、なんと平成13年生まれだそう。筆者と同じ年です!!

同じ21歳でも、日々様々な任務にあたっている「ぼうそう」とのんびり生きている筆者ではえらい違いですね。もっとまじめに、人のためになるようなことをして生きようと決意する筆者なのでした。

さて、このように日々様々な任務にあたっている水上警察隊の皆さんですが、普段は「千葉みなと」という地域と、どのように関わっていらっしゃるのでしょうか。

早速聞いてみましょう。


●地域との関わりについて

-「千葉みなと」という地域に対する想いや取り組みなど、水上警察隊と地域との関わりについて教えてください。

大沼さん:そうですね、我々も一生懸命、発信はしているんですけれども…。なかなか警察にこういった船があるとか、こういった装備品があるとかは、知らない方が多いと思うので、何か今後参加できるイベントなどがあればいいなとは考えています。そういった場で、我々についてもっと知っていってもらえたらいいと思いますね。

-ありがとうございます。そういった機会はやはり必要ですよね。実際に何かイベントに参加されたことなどはありますか?

福永さん:そうですね。花火大会などの会場での催し物が行われる際には、事故が起こらないように警戒についたりしています。地域イベントが安全に行えるようにするという点では、こういった活動はより地域と密接にかかわっているかなと感じますね。

-そうですよね。イベントとなると、人も多くなりますし…。

福永さん:ええ、そうですね。あと、検見川浜なんかは、マリンレジャーも盛んですので、警戒についています。立ち入り禁止区域に入ったり、予定よりも遠くに行ってしまったりすると、帰れなくなってしまうことがあり、事故につながる恐れもあります。そういった方を見つけた場合は、事前に注意をするなどして、安全で楽しめるような広報活動に励んでいます。

-地域との関わりも、人々の安全のために大切なことなんですね。

福永さん:ええ、そうですね。地域の住民の方々が安全にマリンレジャーを楽しめるように、心がけて声かけなどを行っています。事故があってからでは、遅いですからね。

-ありがとうございます。「特にこれは要注意」というイベントなどはありますか?

福永さん:花火大会なんかは、やはり夜間ですし、普段プレジャーボートに乗っていない人が動かすことがあるので、事故が起こりやすいですね。また、夜間ですので、死亡事故などの重大な事故に繋がりやすいので、特に注意して警戒についています。また、当然私たちだけではできないこともありますので、海上保安庁や消防と協力しながら、警戒に当たっていますね。

水上警察隊の皆さんは、イベントなどで「みんなの安全を守るため」に、積極的に地域と関わりを持ってくださっているようです。まさに「うみまちのヒーロー」ですね。

では、そんな水上警察隊の皆さんが望むうみまちのこれからは、いったいどのようなものなのでしょうか。

詳しくお話を伺っていきたいと思います。


●水上警察隊の皆さんが目指す「うみまち」の姿

-水上警察隊の皆さんは、この「うみまちエリア」をどのような地域にしていきたいとお考えでしょうか。ぜひご意見をお聞かせください。

大沼さん:まだまだ、発展の余地はあるのかなと思いますね。最近は開発が進んできていると思いますので、この調子でマリンエリアも発展してくれればいいなと感じています。千葉は結構、レッドブルのエアレースも行われていたりしますので。ここはホテルなんかもありますから、そういった大きなイベントにも向いているのかなと思いますね。

-そうですね。催し物を通して、地域を活気づけることはできそうですね。

大沼さん:ええ。ここは都心からも近いですから。そういった意味では、ここら一帯の地域はまだまだ開発の余地があると思うので。マリンレジャーなんかも、個人的にはもっと盛り上がってほしいと考えています。

―そうですね、ここは本当に海もきれいでいいところですし…。福永さんは、どうでしょうか。

福永さん:やはり、安全で活気のある街になっていってほしいなと思いますね。千葉みなとも、これからどんどん変わっていくとは思いますので。企業に土地を売ったり、商業施設を建てたりして、これからますます地域が活気づいていくといいなと思います。

―ありがとうございます。高久さんは、どうですか?

高久さん:そうですね。私としてはやはり、エネルギーの今後について地域に期待を寄せています。

―エネルギーですか。

高久さん:ええ。これは千葉みなとという地域に限らず、千葉全体の話にもなってきますけれども。千葉港は、袖ケ浦のほうまで広がっていますので、とにかく広いんです。そのエリアに、石油コンビナート基地だとか、火力発電所、石油精製所などがつらなり、非常に大きな工業地帯を形成しています。

―確かに、千葉港は全国その他の港と比べても広いですね。

高久さん:ロシアによるウクライナ侵攻でも明らかですが、こういったエネルギー基地というのはとにかく狙われやすく、危険です。万が一、火力発電所が狙われ攻撃されてしまったら、関東全域に被害が及ぶことになります。1つの火力発電所で膨大な電力を生み出していますから。我々は責任をもって、皆さんの生活を守るためにこの地帯の警戒に当たっているのです。

―本当に、私たちの生活は水上警察隊の皆さんに支えていただいているんですね。

高久さん:個人的には、こういったエネルギー基地が、千葉みなとの変容とともにどのように変わっていくのかに期待を寄せています。最近では、水素などクリーンエネルギーの話も出たりしていますしね。環境問題なども考慮して、この広大な千葉のエネルギー基地が、より良い形に変わっていってくれたらいいと思いますね。

開発が進み、どんどん発展していっているうみまち。水上警察隊の皆さんは、うみまちの地域としての特色を活かして、今後ももっと進化していってほしいと考えていらっしゃるようです。高久さんもおっしゃっているように、エネルギー基地としての千葉港が、よりよい形へと変化していければいいな、と思いました。


●水上警察隊の皆さんから、地域の方々へのお願い

-最後に、水上警察隊の皆さんから、地域の皆さんにメッセージをお願いいたします。

福永さん:ルールを守って、安全にマリンレジャーを楽しんでいただきたいと思います。

高久さん:私共からお願いしたいのは、ライフジャケットの着用ですね。また、潮位にも気を付けていただきたいと思います。潮の満ち引きによる事故が多いのでね。

-なるほど。潮の満ち引きですか。

高久さん:はい。特に潮干狩りなんかは、夢中になってしまって周りが見えなくなってしまい、気が付いたら潮が満ちていた、なんてこともあり得ますから。「うっかり」が事故の始まりですので、皆様には十分に注意していただきたいですね。

福永さん:潮が満ちていても「なんだ、まだ歩けるや」と思ってフラッと行ってしまうと、流されてしまうことがありますからね。「これくらいだったら歩けるかな」と思って海に入ってしまうと、流されて事故につながってしまうのです。

高久さん:遊泳禁止エリアは、禁止になる理由がきちんとあるわけですからね。マリンレジャーをされる方は、きちんと整備された場所で楽しんでいただければと思います。整備されていない場所に入ってしまうと、非常に危険ですからね。

-なるほど。ルールを守って海を楽しむ必要がありますね。

水上警察隊の皆さんとのインタビューを通して、うみまちエリアの安全がどのように守られているのかについて知ることができました!

今回、警察関係者への取材ということで、緊張でがちがちの状態で取材に臨んだ筆者でしたが、水上警察隊の皆さんはとても朗らかに、優しく接してくださいました。最後はリラックスして、警備艇「ぼうそう」と一緒に記念撮影までしていただきました。

水上警察隊の皆さん、本当にありがとうございました!

(取材:志村,撮影:安田)