2019年10月から始まった、ぽかぽかインタビューの「うみまち仕掛人」シリーズ。
蘇我・千葉みなとの今にクローズアップして、うみまちを盛り上げる活動に取り組んでいる“仕掛人”を取材しています。
<千葉市宮崎公民館 主事 高橋延代さん>
第22回でご紹介するのは、千葉市宮崎公民館で主事をされている高橋延代さんです。
高橋さんは南町共栄会で会長を務めていらっしゃる甘利さんからご紹介いただきました。甘利さんの記事はこちらからチェックしてみてくださいね!
高橋さんが主事を務めていらっしゃる千葉市宮崎公民館は、工業地帯の海から市街地、そして淑徳大学等がある大厳寺方面までを管轄にしていて、日々地域住民のために活動なさっています。どんどん新しいことに挑戦なさっていて、47館の公民館が千葉にある中でFacebookとYouTubeチャンネルを持っているのは宮崎公民館だけなんだそうです。ぜひ確認してみてください!
様々な興味深いお話をしていただきましたのでどうぞご覧ください!
<蘇我との出会い>
―高橋様はいつ頃から蘇我でお仕事をなさっているのですか?
『1985年に結婚したので、40年近くここに住んでいるということになります。今の公民館の職員としての仕事は5年目になります。千葉市の公民館はそれまで市の直営だったので私のような主事の立場は市の職員が行っていました。平成30年度からは、生涯学習センター等を運営している千葉市教育振興財団が指定管理者になり、その職員募集の際に応募し、採用されました。』
―当時の蘇我の印象はどういったものでしたか?
『蘇我駅に初めて降りた時はもうズバリ工業地帯という印象でした。私は茨城の田舎生まれで、結婚を機にこちらに来たわけなのですけれども、こんなに曇った空が当たり前の土地って初めてでびっくりしました。そして夜は夜で火事なのかなって思うくらい工場夜景が凄くて、こんなに明るい夜も初めてというくらいの場所でしたね。また、元漁師だった地元の人が結構いましたので千葉弁が分からなかったというのもありました。』
個人的には最初の蘇我の印象を、工業地帯の空を「曇った空」と表現されていたのがとても印象的でした。また、公民館は市が運営しているイメージが強かったので、運営が変わる際に自分から公民館のお仕事に応募して主事さんとして活躍する行動力がすごすぎると感心してしまいました。
<蘇我の魅力・変化>
―蘇我に魅力を感じるところはどこですか?
『古いものと新しいものが融合しているところですね。人もやはり昔ながらの人がいる一方で、どんどん新しい人も入ってきたりするので本当に融合しているなという感じがします。また、宮崎公民館にいるからかもしれないですけど高齢者がとっても元気なところですね。ここに来る人たちはみんな元気で、とても明るく、いつも声をかけてもらっています。こちらが逆に元気をもらったりしているぐらいです。高齢者だけでなく若い人もPTA・おやじの会・青年会の活動に関わる等、子供のために頑張っているお父さんやお母さんがたくさんいます。この蘇我という場所のために何とか頑張ろうという人たちが多い気がします。だれもが活躍しようと思えば活躍できる場所であるという所が魅力に思います。』
―新しい人と昔ながらの人との共生が実現している感じですかね?
『そうですね。昔は「蘇我もん」と「よそもん」という言葉があったくらいに、昔からいる蘇我の人とよそから来た人というようにはっきりとわかれているようなところがあったんですね。今は逆に新しく入ってきた人の方が多いくらいの町になったのに加え、昔ながらの人も世代がかわってきたこともあり、一緒に蘇我の街のために何とかしようって思う人が多いです。生まれたところがここじゃないけれども、ここに引っ越してきました、ここにお家を建てましたっていう人たちも、自分が選んだこの町で幸せに暮らしたいって気持ちがあると思うので、みんなで仲良くしていきたいっていう気持ちがすごく感じられますね。』
―人々との共生が実現してきている蘇我の町ですが、これから更なる変化として期待していることはありますか?
『一人一人がこの蘇我で活躍してほしいなあと思っています。公民館のテーマに「つどい、まなび、つなぐ」という言葉があって、それは人が集まって、学習をして、つながっていくというものですけれども、四つ目に「活躍する」というのを岡山の公民館で発信していたんです。これは人の前に立つとか誰かの役に立つとかそういうことが出来なくても、縁の下の力持ちでいいからその人が持っているものを発揮できる。つまりこれは今までその人がインプットしてきた色々な経験や知識をアウトプットできるような場所になってほしいという想いだと思うんです。それは具体的な場所である必要はなくて、「その人がいれる場所」でいいんだと思います。そういった自分の持っているものを発揮できる場所、発揮できる人が増えてほしいなって思います。そうなっていくことで蘇我の町がどんどんいい街になっていくんじゃないかなあと思います。』
「蘇我もん」というのは初めて聞いたので、昔にそういった区別があったことには驚きでした。しかし、地元の人も新たに入ってきた人も同じ蘇我に暮らす中で協力していくというように変わってきたことは町全体にとってすごく幸せなことだと思います。これから「活躍する」人・場所を含んだ街に変化していって欲しい。そういった想いを持って活動されていらっしゃることが素晴らしいですよね。
<お仕事について>
―公民館でのお仕事について教えてください。
『この宮崎公民館ですと年間だいたい30ぐらいの講座やイベントを開催しています。最近では「赤ちゃんのための防災教室」を行いました。色々な対象を考えながらまた色々な分野で、地域の人に聞いて欲しいなと思う話や逆に地域の人が求めている話題を「こんなのやってみてはどうですか」、「こういうの計画しました。どうぞ来てください」というように提供しています。公民館の役割の一つに地域課題の解決というのがあるんです。地域課題というのは社会の課題と一緒で少子高齢化や過疎化などいろんな問題があり、自分一人の力では解決できないんですけれど、みなさんの意見を聞いて「つなぐ」ということで良い団体があったら紹介することもあります。すぐに解決するような問題はありませんが、「つなぐ」ことでたくさんの人がかかわり一緒に考えていくことが大事なのかなと考えています。』
―どういった時にやりがいを感じますか?
『公民館は全国共通なので、公民館に来れば何かが見つかるんじゃないかって思っている人が来るんですよ。引っ越したばっかりで「何か楽しそうなものない?」って人には「こんな講座があるよ」、「こんなサークルがあるよ」って「つなぐ」のですけれど、その際に感謝の気持ちを言われる時ですね。やっぱり「ありがとう」って言われて嬉しいって気持ちがあるじゃないですか。それがやりがいかなって思います。個人的にはここに来てくれた人に「ああ来てよかった」と思ってもらえるよう頑張るのがこだわりなので、いろんな人が公民館に来て、「公民館の職員さんとおしゃべりするのが楽しい」って言われたらそれだけで十分嬉しいと感じますね。』
―こういったお仕事に興味を持ったきっかけは何ですか?
『高校生くらいの頃から色々なボランティアに興味を持ってボランティア活動をしていたんですね。そういったことがあって、千葉市に来てからも傾聴やパラスポーツ普及のボランティア活動だったり、千葉市の青少年相談員をやってみたりしました。そうやって人の話を聴き、誰かの役に立つということが割と好きだったんですね。そこで覚えた人とのコミュニケーションの経験と、以前に企業やデパートなどで事務をやっていた時の事務的なスキルが全て公民館でアウトプットされているなと思っています。最終的にここの公民館で仕事をするためにいろんな経験をしてきたのかなって思うくらいです。』
気になって聞いてみたのですが、宮崎公民館には施設管理者の館長さん、主事の高橋さん、非常勤の方の3名しかいないそうなんです!公民館の企画、講座、運営などは全て高橋さんがやっているそうです。こんなに大きな公民館でたくさんのお仕事を3人で回しているのはただただ驚きでした。
<地域との関わりについて>
―地域との繋がりをどのように考えていますか?
『地域との関わりというのは、ここに来て、誰かとおしゃべりして、つながって、覚えて、誰かに教える。その繋がりの継続だと思うんですね。良いことは広めて欲しいので、色々な自分が知らないことを教えてくれるというのは知識が広がるし、それを教えられるというように、公民館は一人一人が学んだことをアウトプットして行けるような場所になって欲しいんですね。また、高齢者の中で孤立してしまう人というのがとても心配されているんですが、それは「税金を払っているから市が助けてくれるだろう」では遅いんですね。自分から「助けて」と声を出してほしいのです。誰かと喋らないとどうやってコミュニケーションを取れば良いか分からなくなっちゃう人が多いので、こういう場所にきて誰かとおしゃべりする。そうすると毎日来ていた人が今日来ていないからおかしいとか思うわけですよね。繋がって誰かと話しをする中で、話をして嫌な思いをする、良い思いをするっていうのは全部経験で、話していけば良いことも悪いことも次はこうしようって「良い経験」になっていくと思います。これは高齢者に限らず言えることですけど、どんどん話して、人と繋がって色んな経験をしていくっていうのは、いくつになってもやっていくべきで、いざ自分が困った時に「助けて」と言えるような、そういう繋がりが地域に根付いていくことが大切だと思います。』
やはり何でもいいから人と話すということがとても大切なんだと改めて感じました。長い間コミュニケーションをとっていないと、前までどうやって話していたのか分からなくなるというのは、私もコロナが流行ってから何度か感じたことがあるので、すごく共感できました。これからは人との繋がりを意識して過ごしていこうと思います!
高橋さんへのインタビューを通して、高橋さんが公民館のテーマである「つどい、まなび、つなぐ」を体現されたような方で、特に人を「つなぐ」ことで地域の人々を支えている、それこそ縁の下の力持ちなんだなと感じました。
この記事を読んでくださる方にも、人との繋がりがいかに大切なものなのかを再確認していただければなと思います。
公民館の講座にご興味ある方はオンラインでお申し込みができますのでご確認してみてください。また、公民館では会議等のための部屋利用が無料でできますので若い方もぜひご活用ください。
高橋さん、お忙しい中インタビューを受けてくださってありがとうございました。
取材:宮海璃(NPO法人Drops) 撮影:長谷川鈴実(NPO法人Drops)